J-POP レビューステーション

音楽の言語化をテーマに、J-POPの名曲やアーティストをレビューするブログです。

Foorin・米津玄師「パプリカ」レビュー ~子供には子供の、大人には大人の、意味を持たせた名曲~

言わずと知れた2019年レコード大賞受賞曲「パプリカ」。
先日、畑中摩美さんがYouTubeにアップした「パプリカ」カバーバージョンを視聴した。

これを視聴するまでは、Foorinバージョンの「子供が自然の中で遊び回り、夢を抱く姿を応援する曲」というイメージが強かった。
なので、半音の使い方が巧みで、リズミカルないい曲だなあ、とは思っても、深く聴き込んでなかったのだ。

Foorinバージョンは、子供にとって、自然豊かな場所で子供たちが一緒に踊って歌って楽しめる曲として成立している。

しかし、大人の畑中摩美さんが抜群の表現力で歌うと、懐旧の旅へ連れていってくれる。
2度と戻れない淡い幼少時代が蘇ってきて、あのとき一緒に遊んでいた子たち、夢を語っていた子たちに会いたくなった。

それにしても、サビで唐突に出てくる「パプリカ」。
子供たちが遊ぶ場にパプリカは、あまり馴染みがないはず。しかも、パプリカの花をすぐにどんな花か思い浮かべられる人はほとんどいないだろう。

気になって調べてみるとパプリカの花言葉は、「君を忘れない」。
ここでようやく、歌詞にある「あなたに会いたい」「あなたにとどけ」につながる。しかも、パプリカの花は、この楽曲が描く夏の季節に咲く花だ。

そして、サビの後半は、またも唐突に「ハレルヤ」。
「ハレルヤ」は、キリスト教旧約聖書に出てくる言葉で「神を褒め讃えよ」という意味だ。

この楽曲に出てくる「あなた」は、子供の頃、一緒に遊んでいた仲間。そして、その仲間は、もはや会いたくても会えず、届けたくても届く存在ではないのだ。でも、決して忘れない。
亡くなって神様になった「あなた」なのだ。そんな「あなた」にも、私の夢を語り、届けたい。

Cメロでは、主人公が花を抱えて、「あなた」に会いに行こうとする。
もう会えないはずではないのか。

ネットの情報を総合すると、ヒントは、米津玄師さんがセルフカバーしたMVに隠されているようだ。

このMVの公開日は、2019年8月9日。長崎原爆の日である。
そもそも、Foorinの「パプリカ」が発売になったのは、2018年8月15日。お盆でもあり、終戦記念日でもある。

このMVに登場する「風の子」は、幼少時代に原爆で亡くなった友達とする説もある。MVで描かれる鶴とともに天に昇る映像や、会う場所で咲き誇る彼岸花がそう暗示させるのだ。

主人公は、Cメロで、お盆のお墓参りとして、亡くなった幼少時代の仲間に会いに行くのだろうか。

もしくは、2度と戻れない幼少時代の仲間や一緒に過ごした人々との日々への憧憬と、広げてとらえることもできる。

そして、大サビでは、そんな人々の魂とともに、未来を心弾ませ生きていこう、と誓う。

大人にとっては、大人としての意味、夏になると思い出す幼少時代へのノスタルジー、今を平和に生きられている感謝を表現した歌なのである。