画面を通して相手を見る時間が増えたSNS社会を象徴する名曲 ~優里「シャッター」~
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にアップされた優里の「シャッター」。
切なさと迫真が緩急自在に伝わってくる天才的な歌唱と感傷的なメロディーに魅かれた。
優里が自らのカメラマンを務めるJUN MIYASAKAに提供した楽曲。JUNの過去の恋愛を題材にした内容だという。
なので、優里が歌うバージョンは、カバー作品となる。
どうやら提供曲を歌ったJUN MIYASAKAのバージョンがあまり話題にならなかったため、優里自身が歌うことになったらしい。
そんな経緯まで動画には残っている。この時代の恩恵だ。
今は、アーティストとしての才能に加えて、親しみやすいキャラクターという要素も含めて評価される時代。
優里は、新しい時代を象徴するアーティストだ。
そして、優里自身のボーカルでレコーディングしたバージョンがこちら。
最初に登場するのは、カメラマンの男性が1人で花火を見るシーンだ。
恋人と別れて1人だから、自宅だろうか。
SNSも見ず、カメラも置いたまま。
恋に落ちたのは男性だが、別れを切り出したのは恋人の方。
男性は、まだその女性が好きで後悔ばかりが湧き上がってくる。
男性は、彼女の好きな部分だけを切り取るように愛してきた。
もちろん、それをカメラにも収めてきた。
でも、それは、自分に都合のいい部分ばかりを集めているだけで、彼女の気持ちをくみ取ってあげているわけではなかった。
彼女の目には、きっと自分勝手な男と映っていただろう。
もっと彼女の気持ちに寄り添ってあげていればよかった。
男性の手元に残っているのは、インスタに残るのは自分のカメラで撮影したインスタ映えする写真や映像、言葉。
自分から離れていった彼女に対し、もう声が届かないのに、何度も後悔の言葉を叫び続ける。
そして、もはや自分の中に残る思い出や自分の手元に残る写真などが今後、意味を持たなくなってしまったことに愕然とするのだ。
まだ27歳とは思えない優里の歌唱表現力が主人公の嘆きを見事に表現している。主人公のカメラマンが憑依したかのように、心境を強弱織り交ぜながら、波動のようなメロディーに乗って迫ってくる。日本語の良さを生かした言葉の切り方をしながら、響かせるところでは英語のように滑らかに聴かせる。
まさに感情をメロディーに乗せる天才だ。
私の経験からしても、写真や映像の撮影は、不思議なもので、大事な思い出として残したいがために行っても、間に画面が挟まることで、相手との関係が離れてしまうように感じる。
これは、撮影する側になっても、撮影する側になっても同じだ。
だからこそ、優里は、画面を通して相手を見ることが増えたSNS社会に、人間関係の危惧を感じているのだろう。
この曲は、今の時代を象徴する名曲として語られ続けるにちがいない。
優里は、自らの歌唱表現力の解説を、YouTubeで詳細にしてくれている。しかも、笑いを交えて楽しく。
これまでの一流アーティストにはない、新時代のアーティスト優里の魅力だ。
レコーディング音源よりも、さらに感情を込めて歌ったTHE FIRST TAKEバージョン。
すさまじい勢いで再生数が伸びているのは、やはり多くの人々の心を動かすからだろう。