J-POP レビューステーション

音楽の言語化をテーマに、J-POPの名曲やアーティストをレビューするブログです。

はしもとねねの名曲「暮らし」レビュー ~優里『天歌一武道会』で片鱗を見せた稀有な才能~

インターネットが発達したおかげで、自宅にいながら素晴らしい才能を見つけられるようになった。
昔であれば埋もれていた才能がインターネットでの発信により、どんな地方に住む人々にも届くようになったからだ。

私は、インターネット上で公開となるオーディション番組を見るのが好きだ。
今年、YouTubeの優里チャンネルで『天歌一武道会』という歌唱オーディションがあった。
グランプリになれば、CHIMERAZチームからの楽曲提供と配信をしてもらえる。

私は、この歌唱オーディションの中で、21歳の大学生ながらオリジナル曲をギターを弾いて歌う、はしもとねねに魅了された。

耳に残るメロディー、そして、唯一無二のハスキーボイス。
はしもとねねが歌ったのは、オリジナル曲「暮らし」だった。
サビだけの歌唱しか公開されなかったが、私は、あまりにも大きな衝撃を受けた。
47人中46番目の登場であったが、他の出場者がほとんど記憶から消えてしまうほど、はしもとねねは、圧倒的だったのだ。

はしもとねね登場は、16:20頃から

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はしもとねねは、本選出場はならなかったが、そもそも楽曲提供を必要としないほど、完成度が高いオリジナル曲を作れるから、選出されなかったとさえ思えるステージだった。

それから私は、はしもとねねのYouTubeチャンネルを見つけ、ショート動画で公開となっていた「暮らし」を毎日聴くようになった。
そのうち、どうしてもフルバージョンが聴きたくなって、フルバージョンを要望して、アップしてもらった。

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歌声とメロディーと詞が見事に融合した名曲である。

楽曲が描く世界は、若く感受性が豊かな男女の繊細な恋愛事情。
男性主人公は、恋をする女性に素直な気持ちや思いやる言葉をなかなか伝えることができずに苦悩している。
それは、女性の方も同じで、好きでいながらも、ちょっとした心の行き違いで、うまく感情を通い合わせられない。
「ごめんね」や「ありがとう」。そんなたった二言で解決できるはずなのに・・・。
だから、しばらく一緒に暮らしてほしい。

主人公は、女性の優しさを誰よりも知っているだけに、もっとお互いを分かり合えるようになりたい。
悩みを抱える彼女をもっと愛したい。一緒に暮らし始めると、そんな気持ちが次第に高ぶり、ずっと一緒に暮らしたい、と願うのだ。

終始リズムに乗ったメロディーが極めて心地いい。唯一無二のハスキーボイスを巧みに駆使する歌唱も、聴衆に切なさを添えて伝わってくる。

私が彼女のセンスに感嘆したのは、サビで「だからお願い」のところを一気に歌わず、「お」で切るところだ。
これは、かつてZARD坂井泉水が周囲に反対されながらも「負けないで」のサビで「どんなに離れてても」を「どんなに離」の「な」で切って歌い、大ヒットしたのを思い出した。

「暮らし」は、「負けないで」と同様、どこをとっても名曲である。
はしもとねねには、この曲をきっかけに国民的アーティストへの道を歩んでほしい。
そう期待せずにはいられない名曲「暮らし」である。

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「最後の雨」の詞に感じた「SAY YES」の大きすぎる影響

今月、畑中摩美さんがSing&Winというカバーソングコンテストに参加したので、課題曲「最後の雨」を久しぶりに何度も聴きました。
メインボーカル、コーラス3人分、ギター2人分の1人6役での豪華なカバー動画になっていて、耳でも目でも楽しめます!
まるでハードオフ永田さんのよう。

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畑中摩美さんと言えば、2017年にASKAさんがYouTube上で開催した作詞作曲企画「君が、作詞作曲してみな!『ASKAのFellowsを、私が作ってみた』」で名曲「The One」を発表して、Fellowsの方々に絶賛されました。

今回のカバーソングコンテストは、それを思い出させてくれましたね。
ASKAさんのときの編曲に対して作詞作曲する企画ではなく、主催者に選定された10組が課題曲「最後の雨」をカバーする、というもの。YouTube公開後2週間で最も再生回数が多かったら優勝になるそうです。現在のところ、畑中摩美さんは、トップで再生回数1万回を超えていますが、接戦ですね。
ここまで来たら、ぜひ優勝してほしい!
畑中摩美さんの再生回数集計は、6/19 24:00までだそうです。

本家の中西保志さん歌唱動画も気になって見ていますよ。懐かしい!

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中西保志さんの「最後の雨」は、1992年8月に発売となり、有線でじわじわと火が付き、異例のロングヒットを記録。
カラオケで歌うと映える曲なんですよ。ロングヒットしたのは、当時のカラオケブームも味方したのでしょう。累計90万枚ほど売れたようです。
そして、その後、いろんな歌手がカバーして、発売から31年たった今も歌い継がれています。歌っても気持ちいい曲ですからね。

久しぶりに何度も聴いているうちに、やけに耳に残る歌詞があったんです。

「言葉にできないのが 愛さ
 言葉では君を繋げない」

この詞、かなり「SAY YES」を意識して作ってるなぁ、と。
女性作詞家の夏目純さんが作詞しているそうです。
「最後の雨」の約1年前となる1991年7月に発売となった「SAY YES」の詞はこちら。

「言葉は心を越えない
 とても伝えたがるけど 心に勝てない」

これを見ると、「最後の雨」は、「SAY YES」を本歌取りした、と言っても過言ではないですね。
さすがは、300万枚近く売れただけのことはあります。
ASKAさんのこの詞は、擬人法を使っています。人間でない「言葉」という存在に対し、あたかも人間のように生命感や意思を与えています。
ASKAさんの詞の文学性の高さを物語っていますね。
当時は、こんな擬人法の歌詞をまず見かけなかったので、衝撃的でした。

で、「最後の雨」も、その影響が垣間見えます。

「微笑みは もう二人の夢を見ない」
のところ。顔つきである「微笑み」という存在に意思を与えています。

超大ヒット曲が世に登場すると、似た曲調の曲が一気に増えてくるのと同じで、詞もASKAさんに影響を受けて、似た詞が世に増えてくるんですよ。
そんな側面から見ても、「SAY YES」は、時代の流れを作った神曲ですね。

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祝5周年!ASKA『君が、作詞作曲してみな!』企画の意義を考察

2017年8月2日。ASKAが突如としてYouTubeで公開した『君が、作詞作曲してみな!』は、瞬く間に全国で話題となった。そして、400曲を超える楽曲が生まれた。

 

当時、ASKAの活動主体は、まだYouTubeとブログ程度だった。

2014年から事件、謹慎、誤認逮捕と負の連鎖が続いたASKA。そこからようやく抜け出したのは、2016年12月24日にYouTubeで名曲「FUKUOKA」を発表してからだ。

あのとき、もはや再起不能と噂されていたASKAを救ったのは、世間体やメディアのコンプライアンスに左右されないYouTubeという舞台だった。

 

「FUKUOKA」は、公開後4日間で100万回視聴を突破。長期間、急上昇1位を走り続ける。人間以下の扱いを受ける堕ちた英雄から、復活した天才ミュージシャンへと評価を一変させた。
何もかもが異例だった。

当時は、まだYouTubeが今ほど、市民権を得ていなかった時代。カジサックがYouTubeチャンネルを開始して芸能人が大量に流入してくるのは、まだ1年以上先の話だ。

 

あのときYouTubeがなければ、ASKAがここまで鮮やかに復活できたかどうか・・・。
今となっては、ASKAこそ、不祥事を起こした芸能人がYouTubeで復活する道を切り拓いたパイオニアと言えよう。

「FUKUOKA」で復活を果たしたASKAは、2017年2月22日にニューアルバム『Too many people』を発表し、大ヒット。

 

この年2枚目のアルバム制作を行う過程で、YouTube上で公開した企画が『君が、作詞作曲してみな!』だった。

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イントロから1番が終わるまでの長さにまとまった編曲だけの音源。いわゆるワンコーラスのカラオケ音源だ。
後にそれは、ASKAと鈴川真樹による制作と分かるのだが、この時点では何も判明していない。メロディーや歌詞さえも分からない。

 

ASKAがこの曲につけたタイトルは「Fellows」。後にファンクラブ名称となるその曲名以外の情報はなかった。

ASKAは、動画の概要欄にこう記す。
--------------------------------------------------
君のタイトルは何?メロディは、どうつける?歌詞もメロディも無限です。ここで君の作品となったこの楽曲に、君の歌として公開してみてください。楽しみです。タイトルには「ASKAのFellowsを、私が作ってみた」と、入れてください。
--------------------------------------------------

私は、こんな奇想天外な企画をこれまで目にしたことはなかった。
普通なら、何もない状態から作詞作曲編曲をした楽曲を歌うか、既に完成した楽曲を歌うか、さもなくば何かテーマを提示されて楽曲制作するか。

 

この企画は、そのいずれでもなかった。
編曲が先にあって、それに曲名を付け、作詞作曲を加えて歌え、というのだ。

曲の長さ、リズム、進行が制限される中、作詞作曲・歌唱で自らのオリジナリティーを要求される。しかも、話題性はどんどん低下していくだろうから、制作期間は、短ければ短いほど有利だ。

つまり制限された公平な条件の下で、作詞力、作曲力、歌唱力、迅速な対応能力が試される過酷な企画でもあったのだ。

 

名の売れたミュージシャンにとっては、メリットよりリスクの方が大きい。

おそらくターゲットは、まだ名の売れていない、世の中に埋もれているミュージシャンたち。

 

ASKAは、才能や実力はあるが、まだ知名度が低いミュージシャンを世に出してあげようとしたのだ。スマホやカメラさえあれば誰もが公開できる公平な場所で。

 

今でこそ、その意義をこうして語っている私だが、当時は、そんなことも考えず、ほとんど期待せずに続々と公開される「ASKAのFellowsを、私が作ってみた」曲を視聴していた。

 

そして、ASKAが企画公開した翌日、ひときわ心に残る楽曲が出てきた。

小倉悠吾「ハイウェイ」

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まずは、歌声に魅かれた。高音の伸びと安定感、迫力とも、素晴らしく、ゆずやMr.Childrenを彷彿させる、と。

そして、ポップでありながら郷愁を誘うメロディーと、時空を往来しながら人生をハイウェイに例える詞。

わずか1日でこんな高いクオリティーの楽曲を生み出せるんだ・・・。私は、驚きとともに、小倉悠吾の他の楽曲も聴きたくなった。

 

この曲は、公開から驚異的なスピードで視聴回数を伸ばしていく。良いものが数値化される時代が来たのだ、と実感する出来事だった。

あれから小倉悠吾は、ASKAに才能を認められ、アルバム制作時にはASKAさんが監修をするなど、大きく環境が変わっていく。

 

現在も、ライブや配信などを精力的に行い、どんどんファンを増やしている。

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そして、8/8には私の音楽観を変える楽曲に出会うことになる。

 

畑中摩美「The One」

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大きな希望を前にして視野が一気に明るく開けてくる瞬間の気持ちの高ぶりを表現したメロディーと詞に引き込まれた。

こうやって自らの音楽を発表できる場を得た喜びと、理想の男性に巡り逢えた喜びを重ね合わせるような構成だ。

地声とファルセットを巧みに使いこなしながら、感情の機微を表現する歌声も絶妙である。

 

しかも、編曲に対するメロディーのアプローチがオリジナリティーの塊。この編曲から、このメロディーが生まれてくるというのは、想像がつかなかった。


だからこそ、企画公開から6日目の楽曲公開でありながら、畑中摩美の「The One」は、既に発表済みの楽曲群を視聴回数で抜き去っていった。

 

こんな素晴らしい才能が世に埋もれていたことが信じられなかった。

 

「The One」は、私がインディーズのミュージシャンを数千人聴きあさるきっかけとなり、優れた才能を世に出すサポート活動をするきっかけにもなった。メジャーしか聴かなかった私の音楽観を変えてしまったのだ。

 

ASKAがこの企画を行ったYouTubeチャンネル『Burnish Stone ASKA』は、2022/8/6現在、3.08万人。
一方、畑中摩美の公式Youtubeチャンネルは、3.16万人。

あの企画から5年で、ついに畑中摩美のチャンネルが本家を超えてしまう、という驚くべき事態にまで発展した。

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才能や実力はあるが、埋もれているミュージシャンたちを世に出す企画。

その企画は、今も尚、大きな意義を持ち続けている。

画面を通して相手を見る時間が増えたSNS社会を象徴する名曲  ~優里「シャッター」~

 YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にアップされた優里の「シャッター」。
 切なさと迫真が緩急自在に伝わってくる天才的な歌唱と感傷的なメロディーに魅かれた。

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 優里が自らのカメラマンを務めるJUN MIYASAKAに提供した楽曲。JUNの過去の恋愛を題材にした内容だという。
 なので、優里が歌うバージョンは、カバー作品となる。

 どうやら提供曲を歌ったJUN MIYASAKAのバージョンがあまり話題にならなかったため、優里自身が歌うことになったらしい。

 そんな経緯まで動画には残っている。この時代の恩恵だ。

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 今は、アーティストとしての才能に加えて、親しみやすいキャラクターという要素も含めて評価される時代。
 優里は、新しい時代を象徴するアーティストだ。

 そして、優里自身のボーカルでレコーディングしたバージョンがこちら。

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 最初に登場するのは、カメラマンの男性が1人で花火を見るシーンだ。
 恋人と別れて1人だから、自宅だろうか。
 SNSも見ず、カメラも置いたまま。

 恋に落ちたのは男性だが、別れを切り出したのは恋人の方。
 
 男性は、まだその女性が好きで後悔ばかりが湧き上がってくる。
 男性は、彼女の好きな部分だけを切り取るように愛してきた。
 もちろん、それをカメラにも収めてきた。

 でも、それは、自分に都合のいい部分ばかりを集めているだけで、彼女の気持ちをくみ取ってあげているわけではなかった。
 彼女の目には、きっと自分勝手な男と映っていただろう。
 もっと彼女の気持ちに寄り添ってあげていればよかった。

 男性の手元に残っているのは、インスタに残るのは自分のカメラで撮影したインスタ映えする写真や映像、言葉。

 自分から離れていった彼女に対し、もう声が届かないのに、何度も後悔の言葉を叫び続ける。
 そして、もはや自分の中に残る思い出や自分の手元に残る写真などが今後、意味を持たなくなってしまったことに愕然とするのだ。

 まだ27歳とは思えない優里の歌唱表現力が主人公の嘆きを見事に表現している。主人公のカメラマンが憑依したかのように、心境を強弱織り交ぜながら、波動のようなメロディーに乗って迫ってくる。日本語の良さを生かした言葉の切り方をしながら、響かせるところでは英語のように滑らかに聴かせる。
 まさに感情をメロディーに乗せる天才だ。

 私の経験からしても、写真や映像の撮影は、不思議なもので、大事な思い出として残したいがために行っても、間に画面が挟まることで、相手との関係が離れてしまうように感じる。

 これは、撮影する側になっても、撮影する側になっても同じだ。

 だからこそ、優里は、画面を通して相手を見ることが増えたSNS社会に、人間関係の危惧を感じているのだろう。
 この曲は、今の時代を象徴する名曲として語られ続けるにちがいない。

 優里は、自らの歌唱表現力の解説を、YouTubeで詳細にしてくれている。しかも、笑いを交えて楽しく。

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 これまでの一流アーティストにはない、新時代のアーティスト優里の魅力だ。

 レコーディング音源よりも、さらに感情を込めて歌ったTHE FIRST TAKEバージョン。
 すさまじい勢いで再生数が伸びているのは、やはり多くの人々の心を動かすからだろう。

コロナ禍で希望が崩れた学生たちに贈る名曲 ~back number「水平線」~

2020年は、スポーツをする学生たちにとって苦難の年となった。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ほとんどの大会が中止を余儀なくされたからだ。

多くの高校生が目標とするインターハイもその1つ。
2020年のインターハイでは、開催地出身のback numberの楽曲「SISTER」が演奏予定となっていたという。

それを知ったback numberのメンバーは、インターハイ中止が決まった後、新たな楽曲を制作。開会式が行われる予定だった2020年8月18日に新曲「水平線」をYouTubeに公開する。

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リリースはされなかったものの、じわじわと人気が高まり、翌2021年のインターハイ開会式の開催日8月13日、ついに配信シングルとしてリリース。

瞬く間に全国に広まり、ビルボード・ジャパンのストリーミング・ソングスのチャートで9週連続1位を記録する。

私は、2020年の時点でYouTubeの「水平線」を視聴していたのだが、恥ずかしながらここまでヒットするとは想定すらしていなかった。

私が「水平線」を知ったのは、ASKAのFellows作詞作曲企画でお馴染み、シンガーソングライター小倉悠吾が2021年10月にYouTubeでカバー動画を公開してから。

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これは今年を代表する名曲だぞ、と思って本家を聴いたら既に昨年視聴していた、という……。
小倉悠吾の歌唱表現力が「水平線」の魅力を本家以上に引き出していた、と言わざるを得ない。

その後、ASKAのFellows作詞作曲企画でお馴染み、畑中摩美が弾き語りカバーした「水平線」を聴いて、これは感動が押し寄せてくる名曲だぞ、となった。

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ギターの弾き語りで感情を乗せてしっとり歌われると、歌詞の素晴らしさが増幅して、感傷的な気持ちが溢れ出すのだ。

それで、改めてback numberの「水平線」を聴いてみると、とてつもない名曲だ、と感じるようになった。

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この曲は、最近の楽曲には珍しく、情感豊かなイントロが長く続く。
高揚するでもなく、沈み込むでもなく、悩まし気に水上を漂っているようなイントロが30秒以上続くのだ。

イントロに続く歌から浮かび上がってくるのは、2020年インターハイ中止の光景だ。
この歌の1番は、まさにインターハイ中止に打ちひしがれる高校生へのメッセージだ。

新型コロナウイルスの流行で、高校生の様々な夢の舞台が奪われた。
だから、インターハイだけに関わらず、多くの学生たちが目指した夢の舞台の崩壊を描いているとも言えよう。


夢の舞台に向けて必死に努力する姿。それは、正しさだ。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大を防止しするため、夢の舞台を中止して人々の命を守る。それも、正しさだ。

夢の舞台で活躍して輝かしい栄光を手に入れる。そんな希望は、はかなく消え失せてしまった。

勝者もなく、敗者もない。努力の報われる場所がなく、限界を思い知らされて挫折する場所もない、誰もが。

空高く羽ばたくでもなく、海底に沈むでもなく、まさに水平線。
その穏やかさは、美しくもあるから、それを肯定的にとらえる人だっている。

しかし、当事者は、地獄のような苦悩にあえぐ。
そんなやり場のない悲しみも、長い目で見れば糧となり、いつか貴重な経験として、まるで水平線から昇る朝日のように光を放つときが来るだろう。

そんなメッセージが沁み渡ってくる1番の後、2番ではその後の人生に向けたメッセージが描かれる。

自らを客観視できる広い視野を持ち、自分以外の人たちにも思いやりを持てる人間になってほしい。
いろんな人と出会いながらも、避けられない別れは訪れるけれども。

これから生きていく競争社会の中では、もしひとつ夢を叶えて称賛を得ても、その陰で夢破れて悲嘆にくれる人たちが必ずいる。

どんな事でも継続するには忍耐が必要で、試行錯誤しながら追い求めていくのが自らの人生なんだよ。

これからの生き方へのメッセージがこもった2番の後の大サビにきて、初めて、メッセージを送り続ける私が姿を現す。
私は、大人になって大衆に紛れて平凡な毎日を過ごしながら、価値ある存在になろうと、未だ必死にもがき続けているよ、と。

制作者である清水依与吏が魂をこめたメッセージが、優しく諭してくれるようなメロディーに乗って、最初から最後まで心に響き続ける。

「水平線」は、今後の音楽の教科書に載ってほしいほどの名曲である。

ASKA初オンラインライブ開催の最大の理由は菅沼孝三への感謝だった

当初、通常ライブのクオリティーを届けられない、とASKAさんが頑なに開催をしてこなかったオンラインライブ。

しかし、2021年6月23日、突如開催。

しかも、ライブタイトルが『すべての事には理由がある』。

前言を撤回してまでのオンラインライブ開催ですから、このライブタイトルは、いろんな憶測を呼びましたね。

私も、一体どんな理由が隠されているのだろう、と探るブログ記事を作りました。

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しかし……、そのどれもが派生理由であることが判明しました……。

最大の理由が明らかにされた動画がこちら。

菅沼孝三/お前のことは忘れないASKA

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ASKAさんは、菅沼孝三さんの病状を知って、彼を元気づけるため、そして、もしかしたら、もう今後共演できないメンバーもいるかもしれないから、という感謝を込めて、これまでのチャゲアスバンド、ASKAバンドのメンバー全員に声をかけて、集めたんですね。

感涙です。

メンバーたちがこぞってノーギャラでのライブ参加を申し出たっていう理由も、ようやく納得できました。

私がブログで探り出した理由は、どれもASKAさんが前言撤回するには、弱い理由だなあ、と思っていたんです。

まさか、こんな至高の理由が隠れていたなんて……。

ASKAさんの思考は、常人には及ばないところにあるんです。
長年、ASKAさんのファンを続けていて、いつも想像を超えてくるASKAさんの活動には、驚かされ続ける日々です。


菅沼孝三さんは、ASKAさんの復活ライブ『THE PRIDE』、そして、ASKAバンドとビルボードラシックスが融合したライブ『higher ground』にも参加されています。

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菅沼孝三さんは、CHAGE and ASKAのバンド『BLACK EYES』のメンバーとして、1987年~1989年、そして、1991年~1999年のライブに参加されています。

ご存知のとおり、チャゲアスブームをずっと牽引した名ドラマーですね。

特にロックやポップな曲調の楽曲を演奏する菅沼孝三さんには、誰しも魅了されたのではないでしょうか。

チャゲアス全盛期のライブ映像のほとんどが菅沼孝三さん演奏なので、今はチャゲアス公式サイトで堪能できます。

その中で、菅沼孝三さんの魅力が詰まってるなあ、と感じる1曲をご紹介します。

「Energy」CHAGE and ASKA / CONCERT MOVIE GUYS

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さすが手数王、という、圧倒されるドラムプレイですね。


そして、菅沼孝三さんと言えば、数々の後継者の育成にも力を注がれました。
娘のSATOKOさんや弟子の川口千里さんは、有名ですね。

まずはSATOKOさんとの共演。

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次のASKAさんのライブツアーでは、SATOKOさんんが菅沼さんの跡を継いで、ASKAバンドに加わるとのこと。
楽しみで仕方ありません。

そして、川口千里さんとの共演。

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まさに手数王が2人といった感じの重厚な演奏ですね。

菅沼孝三さんと娘のSATOKOさん、さらには、川口千里さん、平陸さん、坂東慧さんの弟子3人を数珠つなぎにした演奏は、最高です。

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他にも未来の音楽業界を支えるであろうドラマーも数多く育てています。
高い技術と抜群の精度、そして、魅せるプレイを兼ね備えた菅沼孝三さんの理念をしっかり引き継いでいると感じたお2人をご紹介しましょう。

まずは、RYUGA(内田龍芽)さんの「紅蓮華」のドラムプレイ

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RYUGAさんは、菅沼孝三さんに師事し、9歳で『最強プレイヤーズコンテスト2009』のグランプリを史上最年少で受賞しています。
現在では、世界を股にかけた活躍をされています。

そして、CHITAA(ちた)さんの「小さな恋のうた」ドラムプレイ

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CHITAAさんは、5歳で菅沼孝三さんに師事し、10歳で世界的ドラムコンテスト「DRUM-OFF GLOBAL 2019」のガールズ部門(35歳以下)で最年少優勝を果たすという快挙を成し遂げました。

宇宙にいる菅沼さん。これからが楽しみですね。

ASKAさんが世の中に与え続けているものの本質に迫る企画『点光源』

今週は、ASKAさん公認の人気ライターs.e.i.k.oさんの超人気インタビュー企画『点光源』に登場させていただきました。

『《点光源 #7》 応援のプロは、この社会を豊かにする。』

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この『点光源』は、ASKAさんも楽しみにしている、と公言されているほどですから、完成度はお墨付きです。

私も、インタビューを受けてみて、s.e.i.k.oさんのインタビュー力に驚き、仕上がった作品の文章力にも驚かされました。

s.e.i.k.oさんは、過去にマスコミの仕事をされていて、現在はライターとして活動されているので、インタビュー力も文章力も超一流。

なので、平凡な私を描いても、まるでテレビ番組『情熱大陸』に出演する著名人のように表現された名作になっていて、もはや感謝しかありません。

『点光源』は、テレビ番組『情熱大陸』と阿川佐和子さんの連載対談『この人に会いたい』を合わせたような企画。

それに加えて、通常のインタビューなら、ASKAさんやバンドメンバーといった有名人を相手にするところを、s.e.i.k.oさんは、有名無名を問わずASKAファンを相手にしています。

今まで、ありそうでなかった企画ですね。

s.e.i.k.oさんは、この企画を開始するにあたり、noteでこのように書かれています。

『自分を振り返り、大事なものを確認し、覚悟を決めて先に進む。
そんな時期に、どんな風にASKAの音楽は寄り添っているのか。
なぜ他でもなく、ASKAなのか。(中略)
数々の愛され方が浮かび上がれば、そのアーティストが世の中に与え続けているものの本質が、作品分析とは別の角度から見えてくるかもしれない。』

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s.e.i.k.oさんの企画に賛同していた私は、今回のインタビューで自らの半生や活動理由を赤裸々に語らせていただきました。
1つの『点光』として、s.e.i.k.oさんの作品集の一部になれて光栄です。

『点光源』に登場したASKAファンは、私が7人目。これからも、どんどん作品が累積していくでしょうから、目が離せません。

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最後に、ASKAさんが自らのブログで絶賛したs.e.i.k.oさんの記事も、ご紹介しておきます。

’90年代からのタイムスリップ、2020年のASKAの衝撃

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光GENJIはバブルの世に愛を伝える「キリスト」だった説。

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ASKAVR生配信は、ゼロの有価値化である、という話。

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もし「あなたが一番魅かれる音楽ライターは誰ですか?」と訊ねられたら、私は、迷わずs.e.i.k.oさんの名前を挙げます。