J-POP レビューステーション

音楽の言語化をテーマに、J-POPの名曲やアーティストをレビューするブログです。

CHAGE and ASKAのYouTubeチャンネル10万人登録達成へ

現在、YouTubeの『CHAGE and ASKA Official Channel』登録者数が9.95万人。
つまり、あと500人で10万人登録達成です。
今月中には到達しそうですね。

 

www.youtube.com

 

YouTubeでは、10万人登録が成功の目安。達成するとGoogleから銀の盾がもらえます。100万人登録が金の盾で、これが大成功の目安ですね。

思えばCHAGE and ASKAは、2007年のライブ以降、活動を休止していますから、もう12年間も活動していません。

CHAGE and ASKAYouTubeチャンネルができたのは2013年ですから、活動なしで徐々に登録者を増やして、10万人に到達しようとしているんですね。

もし1990年代にYouTubeがあれば、どれだけ登録者がいたか、妄想してしまいます。
今ブームの米津玄師さんがまもなく500万人登録を達成しようとしていますが、チャゲアスブームはそれ以上でしたから、すさまじい記録になっていたのではないでしょうか。

さて、『CHAGE and ASKA Official Channel』の人気動画上位は、というと。

1位:「SAY YES」MV 1459万回視聴
2位:「YAH YAH YAH」MV 984万回視聴
3位:「太陽と埃の中で」MV 430万回視聴
4位:「僕はこの瞳で嘘をつく」MV 354万回視聴
5位:「モーニングムーン」MV 289万回視聴
6位:「On Your Mark」MV 231万回視聴
7位:「PRIDE」MV 229万回視聴
8位:「LOVE SONG」MV 220万回視聴
9位:「no no darlin'」MV 198万回視聴
10位:「HEART」MV 185万回視聴
 (2020年7月4日現在)

まあ、「SAY YES」と「YAH YAH YAH」が圧倒的ですね。

「SAY YES」CHAGE and ASKA

「YAH YAH YAH」CHAGE and ASKA

何と言っても、メディアがチャゲアスを紹介するとき、まずはこの2曲を流しますから仕方ありません。

3位に食い込んでいる「太陽と埃の中で」は、常に人気曲上位に食い込んでくる名曲です。「SAY YES」の後で発売になっていたら、確実にミリオンセラーになっていたでしょうね。

「太陽と埃の中で」CHAGE and ASKA


これら10曲よりも注目したいのは、コロナ禍の中で公開となったライブ映像作品の人気上位ですね。

1位:「メドレー」チャゲ&飛鳥 熱風コンサート
2位:「no no darlin'」史上最大の作戦
3位:「RED HILL」alive in live
4位:「PRIDE」史上最大の作戦
5位:「On Your Mark」two-five
6位:「モナリザの背中よりも」GUYS
7位:「僕はこの瞳で嘘をつく」GUYS
8位:「ひとり咲き」HISTORY 2 ~PRIDE~
9位:「THE TIME」史上最大の作戦
10位:「GUYS」GUYS
  (2020年7月4日現在)

1位は、15分間に11曲を詰め込んだメドレーです。

「メドレー」CHAGE and ASKA / 25th Anniversary Special チャゲ&飛鳥 熱風コンサート

「LOVE SONG」「パラダイス銀河」「Newsにならない恋」「ボヘミアン」「ふたりの愛ランド」「ふたり」「嘘」「伝わりますか」「シングル・ベッド」「YAH YAH YAH」「太陽と埃の中で」

これだけ名曲をメドレーで揃えたら、1位になるのは当然でしょう。
CHAGE and ASKAは、メドレーをやるのが非常に珍しく、これだけの数の曲をメドレーでやったのは唯一。極めて貴重な映像作品です。

そして、2位は、この曲。

「no no darlin'」CHAGE and ASKA / 史上最大の作戦

「no no darlin'」は、男女の心境のやりとりをASKACHAGEの2人で対話風に表現した名曲。メロディー、詞、歌唱、アレンジのすべてに芸術性の高さを感じます。
長いCメロも、人気がありますね。

3位は、CHAGE and ASKAの集大成とも言えるこのライブのこの曲。

「RED HILL」CHAGE and ASKA / Concert 2007 alive in live

ライブだからこそ味わえるこの巨大なエネルギー。
アコースティックバージョンとは思えないほど、重厚な演奏と迫力ある歌唱が完璧にかみ合い、CHAGE and ASKAの魅力が存分に堪能できます。


今回、取り上げた楽曲以外にも、CHAGE and ASKAは、名曲が盛りだくさん。

まだYouTubeに公開となっていない名曲や名ライブ映像も数多くありますから、随時公開してもらいたいですね。

中島みゆきと瀬尾一三をつなげたのはCHAGE and ASKAだった

今週は、Chageさんがゲストで参加した瀬尾一三さんのスペシャトークイベントが限定公開となって、話題です。

その中で、ひときわ印象に残ったのは、中島みゆきさんが瀬尾一三さんの編曲で楽曲を発表するようになったきっかけが実はCHAGE and ASKAだった、という話。

CHAGE and ASKAがレコーディングしているスタジオの前を中島みゆきさんが通りがかって、「この音は誰?」と訊ねたところから、瀬尾一三さんへのつながりが生まれたそうです。

これは、音楽史に残る伝説です。

瀬尾一三 スペシャトークイベント(ゲスト:Chage

ヤマハから発売となった書籍『音楽と契約した男 瀬尾一三』にもそのシーンが書かれています。

ヤマハ『音楽と契約した男 瀬尾一三

www.ymm.co.jp

 

そうなると、中島みゆきさんは、一体どの曲の編曲を聴いて、瀬尾一三さんの才能に魅かれた、ですね。

瀬尾一三さんは、1988年10月に初めて中島みゆきさんのシングル「涙-Made in tears-」の編曲を担当されています。

と、いうことは、CHAGE and ASKAで1988年3月に発表したアルバム『RHAPSODY』か1988年11月に発表したアルバム『ENERGY』の中のどれかです。

この2アルバムで瀬尾一三さんが編曲(アレンジ)を担当した楽曲は

『RHAPSODY』
  「BELIEVE IT?」
  「ロマンシングヤード」

『ENERGY』
  「Energy」
  「夢のあとさき」
  「Far Away」

この5曲の中で、中島みゆきさんは、どの編曲に魅かれたか。

「BELIEVE IT?」は、ちょっと中島みゆきさんの曲調には合わない気がしますね。
「ロマンシングヤード」と「Energy」も、ノリはいいですが、中島さんの感性に合うかどうかと言われると微妙。

そうなると「夢のあとさき」「Far Away」のどちらかの可能性が高いですね。
私としては、壮大さと繊細さを兼ね備えた「Far Away」であってほしいですね。
CHAGE and ASKA瀬尾一三さんが最後の最後に発表したのが「Far Away」ですし。

もはや、私の勝手な願望になってしまいました。


さて、CHAGE and ASKAのデビュー当時から編曲を多数担当していた瀬尾一三さん。
「ひとり咲き」や「終章」も、瀬尾一三さんの編曲です。

[LIVE] ひとり咲き / CHAGE and ASKA / HISTORY II ~PRIDE~


[LIVE] 終章(エピローグ)~追想の主題 / CHAGE and ASKA / COUNTDOWN LIVE 03-04 in SAPPORO DOME

 

デビュー当時から、天才編曲家瀬尾一三さんに編曲してもらったCHAGE and ASKAは、幸運ですね。

そんな瀬尾一三さんですが、CHAGE and ASKAのアルバムへの参加は1988年11月の『ENERGY』が最後となっています。

瀬尾一三さんは、1989年以降、中島みゆきさんの編曲だけでなく、コンサートも全面プロデュースすることになって、他のアーティストとの仕事がほとんどできなくなったそうです。

中島みゆきさんは、その後「浅い眠り」「空と君のあいだに」「旅人のうた」「地上の星」とミリオンセラーヒットを飛ばします。また「糸」は、長い年月をかけて日本を代表する名曲との評価を得ました。
これらの楽曲は、すべて瀬尾一三さんの編曲です。

地上の星 / 中島みゆき [公式]


瀬尾一三さんが中島みゆきさんの方へ行ってしまって、最大の編曲者を失ったCHAGE and ASKAは、1989年以降、どうなってしまったのか。

入れ替わるように、「PRIDE」をひっさげた新しい編曲者、澤近泰輔さんが現れるんです。

アーカイブ生配信】澤近泰輔 / 60祭61祭ダイジェスト~還暦恋歌~

当時のエピソードと「PRIDE」演奏が6/29まで公開中です。1:22:05頃から。

その後の澤近泰輔さんの活躍は、もはやご存じのとおり。

瀬尾一三さんが中島みゆきさんと出会わずにすっとCHAGE and ASKAの担当をしていたとしたら、あの「PRIDE」のイントロは、生まれなかったかもしれない。

そう考えると、運命っていうのは、不思議なものですね。

とんねるず「君を万引きしたい」レビュー

昨日は、芸能界の超大物とんねるず石橋貴明さんがYouTubeを開始という大ニュースがありました。

貴ちゃんねるず(とんねるず 石橋貴明

www.youtube.com


貴ちゃんねるず『石橋貴明、58歳。YouTube、はじめるでしょ。』

私は、とんねるず世代のど真ん中。
BIG3と言えば、とんねるずダウンタウンウンナンが浮かぶほど。
長年、テレビでゴールデン番組をやっていただけに、お笑いの実力は別格です。

そんな大スターがYouTuberになるのですから、いよいよYouTubeの時代になった、と感じます。

今回の動画も、軽くトークしているだけなのに、面白い。

貴さんは、ASKAさんとも仲がいいはずなので、ぜひ共演してほしいですね。

貴さんのYouTubeチャンネルは、もちろん視聴して、チャンネル登録もしたのですが、当ブログとしては何か物足りません。

そこで、ついに気になっていたあの曲購入を決断しました。

ASKAさんがとんねるずに提供した曲「君を万引きしたい」。1987年のとんねるずのアルバム『河口湖』に収録となりました。
当ブログを読んでいただいている方には、記憶に残っているかもしれません。

還暦神セブンで秋元康さんを特集したとき、私が詞を読んで「聴く気が起こらない」と書いたあの曲です。

あのときは、そう感じていたのですが、今、とんねるずの貴さんがYouTubeを開始するとなると、もはや買って聴くしかないでしょう。

天才アイドルプロデューサーの秋元康さん作詞、天才メロディーメーカーASKA作曲、お笑い界の革命家とんねるずが歌、なんですから、いつか聴かざるを得なくなります。
ですから、聴くなら、今でしょ。

ということで、ついにレコチョクで購入しました。

レコチョク とんねるず『河口湖』

recochoku.jp

そして、聴いてみた感想は、「想定を遙かに超える名曲」。
まさに「聴かず嫌い」でした。
実際に聴くと、一気に好きになりました。

パラダイス銀河」や「モーニングムーン」級のメロディーです。何と言っても、「君を万引きしたい」は、作曲がASKAさんで編曲は佐藤準さん。
つまり、これら3曲は、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼ら2人が作り上げた楽曲なのです。
そりゃ、名曲にならないはずがありません。

タイトルや詞は、今ならコンプライアンスに引っかかって、発売中止になりそうですが、当時はバブル絶頂期ですから、華やかでノリが良いリズムに乗せた、ちょい悪で軽妙な詞が受けたのでしょう。きっと、秋元康さんも、それを狙ったはず。

よく聴くと、「欲しい物を奪う」と「唇を奪う」をかけ、「ガードマンからの説教」と「相手の父親からの説教」をかける、風刺の効いた比喩を使っています。秋元さんも、やはりさすが名作詞家です。

とんねるずは、ツインボーカルの強みを生かし、Aメロは1番を貴さん、憲さんの順で歌い、2番は、逆に憲さん、貴さんの順で歌っています。Bメロがないのに、Bメロがあるかのように聴こえる効果を生み出しています。
サビは、もちろん2人で歌う強力な体制。
ASKAさんらしく、Cメロにあたるメロディーもきっちり用意されています。

いやあ、こんな名曲を今まで、タイトルと詞だけで嫌って、聴いていなかったなんて、なんて大損をしていたのでしょう。
何事も、先入観にとらわれてはいけませんね。

才能あるアーティストは、誹謗中傷とどう向き合ってきたか

先週の記事に、多大な反響ありがとうございました。
誰しも、誹謗中傷を避けては通れないのだ、と改めて強く感じました。

あのイチロー選手ですら、前人未踏の日米通算4257安打を達成したときの会見で、過去に誹謗中傷を受けてきた経験を語っています。
「小学生の頃に毎日野球を練習して、近所の人から『あいつプロ野球選手にでもなるのか』っていつも笑われていました」
と。

誹謗中傷していた人たちも、まさか将来、世界一の選手になるとは夢にも思っていなかったでしょう。世間で噂される言葉なんて、その程度の浅はかさなのです。

でも、若い頃は、そういった誹謗中傷をうまくスルーできず、心にため込んで、苦しみがちです。

そう考えていたら、気になり始めました。
才能あるアーティストたちは、今まで誹謗中傷とどう向き合ってきたのか、と。

最初に浮かんだのが長渕剛さんの初期の名曲「顔」。

長渕剛「顔」

若き日の長渕さん自身が主人公でしょう。
生意気な奴だと笑われて相手にされない。仕方なく、偉い人に媚びて褒められた主人公は、そのとき鏡に映した自らの顔に恥を感じます。

そして、主人公は、誹謗中傷されても、いつか春が来ると信じて、自らの信念を曲げず、粘り強く生きていこう、と自らの心に誓うのです。

この歌を聴いていて、そういえば、チャゲアスも、若き日に受けた誹謗中傷を歌った名曲「歌いつづける」があるじゃないか、と気づきました。

チャゲ&飛鳥「歌いつづける」

この曲は、チャゲ&飛鳥のデビューが決まり、上京する前にASKAさんが制作してライブで披露しました。

「汚れた口の噂あるけど 気にしていたんじゃ歌えまい」
ここからは、当時、様々な誹謗中傷を受けていた状況が垣間見えます。

それでも、どれだけ叩かれようとも、常に全力で歌いつづけることによって、活路を開いてやる。
そんな意気込みが伝わってきます。

ASKAさんのFellows作詞作曲企画でお馴染み、畑中摩美さんも、受けてきた誹謗中傷を歌った名曲「棘の花」があります。

畑中摩美「棘の花」

世間や周囲からいろんな誹謗中傷を受けて傷ついた若手時代が映像のように浮かんできます。
軽い気持ちで投げかけられた言葉は、そのときはさほど痛くなくても、心の中でイバラのようにどんどん成長して、痛みが増していく。

前に進むには、刺さった棘を自分で抜かなきゃいけない。
若い頃に抜けなかった棘も、今なら抜ける。誹謗中傷で傷ついた自分を救い出すのは、成長した自分自身の確固とした信念のみだ。
そんな迫真の絶唱が沁み渡ります。

 

トゲノハナ

トゲノハナ

  • アーティスト:畑中摩美
  • 発売日: 2016/01/11
  • メディア: CD
 

 

そして、歴代最高の売上を更新し続けるアーティストB'z。
最近、彼らも受けてきた誹謗中傷を歌った名曲があることを知りました。
本家のライブ映像は緊急事態宣言解除で公開終了したので、畑中摩美さんによるカバーでご紹介。

B'z「あいかわらずなボクら」カバー/畑中摩美

1991年の作品ですから、B'zが大ヒットを連発し始めた頃ですね。
日本で最も成功しているアーティストB'zでさえ、「あいつはダメだ」と誹謗中傷を受けて、苦しんでいたんだ、と気づかされます。
でも、そんな誹謗中傷なんて、余計なお世話だ、と軽く返すところがB'zのぶれない信念でしょう。

いつでも正しい人なんて、この世にいないんだから、自分のやりたいことをやっていこう。
B'zが残してきた前人未踏の結果は、まさにこの楽曲が描く彼らの姿そのものです。


直接誹謗中傷を受けた、と歌っている曲でなくても、誹謗中傷を受けた苦悩を感じさせる楽曲があります。
2008年の紅白歌合戦レコード大賞で披露された森山直太朗さんの名曲「生きてることが辛いなら」は、衝撃でした。

森山直太朗「生きてることが辛いなら」

当時「いっそ小さく死ねばいい」という歌詞が物議を醸しましたね。
世間がその部分だけを話題にして、森山さん自身が激しい誹謗中傷を受けるという本末転倒な事態が起きました。

実際は、小さく死ぬっていう表現は、比喩なんですよね。
自らが置かれた環境、つまり誹謗中傷を受けている学校や家庭、職場から逃げて生き延びろっていう。
対義語としてきっと「大きく死ぬ」という本当の死があって、「小さく死ねばいい」というのは、死んではならない、というメッセージだと考えられます。

楽曲全体を通して聴くと、人生全体を俯瞰して、生きる価値を訴え続ける壮大なスケールであることが分かります。

 

Mr.Childrenにも、誹謗中傷が渦巻く社会の改善を真剣に考察する名曲「タガタメ」が存在します。

Mr.Children「タガタメ」

いつ子供たちが被害者になったり、加害者になったりするか分からない現代社会。
そうならないようにするために、自分たちは、一体何をすればいいのだろう。

主人公は、映画を見たがる彼女を制して、真剣に誹謗中傷が渦巻く社会の改善を考えようとします。
もはや祈るしかないのか。
考え疲れた主人公は、気分転換に広い公園へ散歩に出かけます。

そして、そこで、自分たちがかろうじて何が出来るかと言えば、「愛すこと以外にない」という結論に達するのです。


以上、日本を代表するアーティストたちが誹謗中傷と向き合ってきた名曲群でした。

多くの人々が楽曲を自らの境遇と重ね合わせることによって、救われているのではないでしょうか。
私は、これらの楽曲に、極めて高い価値を感じます。

ASKAが1995年以降、誹謗中傷について歌い続けた価値

今週は、SNSでの誹謗中傷について、様々な話題が飛び交いました。将来は、世界のプロレス界の大スターになれる逸材だった木村花さんのニュースに無念を感じずにはいられません。
実は、私は、岩谷麻優選手のキャラクターが好きでスターダムのファン。
最近もYouTube動画を観ていたので、この1週間は、ニュースを読みあさってしまいました。

私も、音楽や野球のSNSをやっている以上、他人事ではありません。
長くやっていると、たまにアクセス数が跳ね上がるときがあって、アンチコメントが書き込まれたり、2チャンネルでいろいろ書かれる、など誹謗中傷に悩まされたこともありました。
世間から一時的にストレスのはけ口にされているだけ、と分かっていても、やはりダメージはあります。

キングコング西野さんのように、誹謗中傷されすぎて、アンチコメントなんて蚊みたいなもの、という達観にたどり着くのは容易ではありません。

ここのところ、メンタリストDaiGoさんやビジネスYouTuberマナブさんなどは、法的措置を行って、抑止力を高める効果を模索されています。
今後、SNSでの誹謗中傷が著しく減少するのを願うばかりです。

そんなことを考えると、気になるのがASKAさんの受けてきた膨大な誹謗中傷です。
音楽業界の頂点を極め、奈落の底に落とされ、そこから復活を遂げたASKAさん。
楽曲で振り返って見ていくと、ASKAさんの苦悩が垣間見えます。

ASKA「月が近づけば少しはましだろう」

この曲の発表は、1995年2月。
大ヒットを連発するチャゲアスブームの渦中で、まだインターネットが普及も進んでない時代。

そんな絶頂期にありながら、ここまで苦悩を吐露する楽曲を発表したのは驚きました。
まさにASKAさんのターニングポイントになった楽曲です。

サビの「この指の先でそっと拭きとれるはずの言葉だけど」。
今聴くと、ASKAさんの中には、四半世紀前にスマホの指操作で誹謗中傷の言葉を消すイメージがあったのか、と鳥肌が立ちます。


ASKA「はるかな国から」

この曲は、いじめられた少年の自殺を取り上げた作品。
描かれるのは、誹謗中傷に苦しむ人たちへのメッセージです。
どんなことがあっても、決して死んではならない。季節とともに服を着替えるように、生きやすい環境を見つけて、生きよう。
長い目で見れば、誹謗中傷は、一時的なものだし、逃げ道はあるのだから。

この曲も1995年2月発表。上記2曲が収録となったアルバム『NEVER END』はASKAさんの音楽史の中で、重要な位置に存在します。


ASKA「ID」

1997年2月発表の「ID」が描いた世界は、その後、インターネットの世界で仮想現実の世界として実現してしまいます。
自らの氏名とは全く異なる個人のIDは、その匿名性の高さから徐々に、巨大掲示板SNS、ブログなどで他人への誹謗中傷の道具となっていくのです。

つまり、ASKAさんは、核家族化、都会化が進んだ上にネット社会になり、人々が匿名で過激に攻撃し合う社会が間近に迫ってきていることを当時から予見し、楽曲として発表したのです。
私は、この楽曲が描く世界が現在のネット社会における最大の問題として顕在化したことに驚きを隠せません。
ASKAさんがまさに時代の先を読んだ感性でこの楽曲を制作し、将来へ向けた警告を発していたように感じられます。


CHAGE and ASKA「群れ」

この曲をチャゲアスのシングルとして発表したのは、当時驚きました。
いつまでもバラードやポップスのヒットメーカーとしての姿を求める世間に対するASKAさんのメッセージが詰まっています。

当時、どんどん進化していきたいASKAさんに対して、世間は1990年代前半の姿を求めていました。中には、誹謗中傷もありました。
その声の1つ1つは、軽い気持ちで発せられたとしても、様々な人々を通して世間に広まるにつれ、噂がひとり歩きして、とんでもない話が出来上がってしまったりします。
チャゲアス史上最も大きな葛藤を描いた楽曲と言えるでしょう。


ASKAさんは、事件後、復活アルバム『Too many people』を発表し、そのタイトル曲「Too many people」もまた、自らに浴びせられる言葉に反応した楽曲でした。
タイトルのとおり、世間やマスコミ、警察、ファン、親族、友人、音楽関係者など、ASKAに関係する多くの人々に、自らの想いが正しく伝わらないもどかしさを字余りの朗読調で歌い上げています。

 

「Fellows」ASKA

そして、ファンクラブの名称ともなった「Fellows」。
ASKAさんは、数々の修羅場を一緒に潜り抜けてきたファンを「Fellows」と呼び、「イカした仲間」という意味で使っています。

主人公は、他人の何げない言葉に傷つき、愛情から生まれる苦言にも傷つき、自分の中で様々な苦痛となって降り積もっています。
そして、自ら発言する機会を自らの心の中に溜め込み、1人苦痛にもだえます。

それでもなお、仲間とは気持ちを共有し、寄り添いたい。主人公は、黙り込みながらも、仲間の話に耳を傾けるのです。


「修羅を行く」ASKA

「Fellows」からの流れを感じさせる楽曲です。
批判や誹謗中傷が渦巻く社会で、寂しさと虚しさを感じながらも、試行錯誤を繰り返し、戦い続ける覚悟を描きます。

果てしない誹謗中傷に傷つきながらも、戦車のように前に進まなければならない自らを、もはや宿命なのだと受け止めています。
ファンや仲間には、黙って抱きしめるように見守ってほしい、という願いも歌っています。


1995年以降、誹謗中傷を歌にして昇華しようとしてきたASKAさん。
きらびやかなバラードやポップスを求める人々にとっては、不満が積もったでしょう。

しかし、ASKAさんが自らの内面を赤裸々に歌い続けてきたことで、それらの楽曲に救われたという話を数多く聞きます。
私は、その結果こそが真の価値だと思うのです。

 

あいみょんの名曲「憧れてきたんだ」レビュー ~偉大な先駆者への熱い想い~


あいみょん、と聴いて、多くの人が思い浮かべるのは「マリーゴールド」のポップで爽やかなイメージだろう。
YouTubeのMVは、2020年5月時点で約1億8千万再生。

 

しかし、あいみょんの実像は、おそらく2017年に発売となったメジャーデビューアルバム『青春のエキサイトメント』に最も出ている。

文学作品では、デビュー作に作家の本質が詰まっている、と評されることが多い。
音楽作品でもまた、デビュー作にシンガーソングライターの本質が詰まっているのである。

 

そして、私があいみょんのデビューアルバム1曲目の「憧れてきたんだ」を頻繁に聴くようになったのは、この記事を読んでからだ。

tokyo.whatsin.jp

あいみょんCHAGE and ASKAを好きらしい、という噂は、以前から知っていたのだが、インタビューではっきりと「影響されて新しい音楽が生まれてきた」と語ってくれたのが嬉しかった。

 

この「憧れてきたんだ」は、あいみょんが子供の頃から憧れてきたスターへのリスペクトで構成されている。

youtu.be

こんな才能あふれる人たちに影響されて、今の自分が作られたんだよ。
1曲目のこの曲でそう前置きして、2曲目以降で、影響されて出来た楽曲群を聴かせていくという編成だ。

 

「憧れてきたんだ」は、シンプルな構成だ。Aメロとサビ、そして楽器も、アコースティックギターとドラム。
歌唱も、想いをぶつけるように、少々の音割れも気にせず、力強く歌い上げる。
マリーゴールド」とは、打って変わって、ロックな歌いっぷりなのだ。

 

1番では、亡くなったロックスター、メジャーを辞めたシンガーソングライターを歌う。
メジャーを辞めたシンガーソングライターは、上記で紹介した記事の中で、ASKAだと分かる。
亡くなったロックスターは、プリンスだろうか。

 

2番では、姿を見なくなったスーパーエンターテイナーと、ナイスガイなアクターを歌う。
スーパーエンターテイナーは、島田紳助だろうか。アクターは、押尾学だろうか。

ASKA以外は、いったい誰なのか確証がとれないので、いろいろと想像してしまう。

 

いろんな才能を吸収して作られたシンガーソングライターがあいみょんなんだよ。
そして、そんな才能溢れる人たちが1回の過ちで表舞台から消されてしまうのは、大きな損失だよ。

そんな主張の歌である。

 

この曲を聴けば、「マリーゴールド」のあいみょんが、「憧れてきたんだ」では、才能ある先駆者へのリスペクトと、そんな先駆者を潰そうとする世間への批判を、強いメッセージとして放っていることに驚くはずだ。

 

あいみょんというシンガーソングライターの本質は、「憧れてきたんだ」にある。

あいみょんの名曲「憧れてきたんだ」は、ASKAさんへのメッセージだった

今週は、ふとした記事から、あいみょんさんに、はまっています。

あいみょんさんがライブ前のSE(サウンドエフェクト)でCHAGE and ASKAの『SUPER BEST2』を流しているのを知ってから、あいみょんさんにはずっと注目してきました。

そして、今週、知ったあいみょんさんのインタビュー記事。
メジャーデビューアルバム『青春のエキサイトメント』1曲目の楽曲「憧れてきたんだ」の話の中で、ASKAさんが逮捕されてCHAGE and ASKAの音楽が流れなくなったときの話題が出て。
『CAHGE and ASKAさんのときはマジで私怒ってました。あの頃、ラジオとかでもかけちゃダメってなって。そんな、音まで消さんくてもって。曲自体には何の罪もないじゃないですか。どれだけCHAGE and ASKAさんに影響されて新しい音楽が生まれてきたか』

上記引用の元記事は、こちら。
あいみょん “青春の興奮から生まれた音楽”が濃縮されたアルバム。心に突き刺さる歌声、エッジの効いた詞が生まれる秘密を探る』

tokyo.whatsin.jp

 

あいみょんさんは、メッセージ色の強い詞を書くシンガーソングライターで、デビューアルバムの記念すべき1曲目に「憧れてきたんだ」を収録しています。
あいみょんさんがデビューしたとき、最も世間に伝えたいメッセージが入っていると考えられます。

あいみょん「憧れてきたんだ」

歌っている内容がまた熱くて。

「私の知ってるシンガーソングライター
 数年前にメジャーを辞めた
 歌うこと歌うこと
 まだ続けていてくれよお願いだ
 憧れて 憧れて 憧れてきたんだ
 あなた達が奏でた音で
 私は変わったんだ」

最初は、一体誰に向かって、メッセージを放っているんだろう、と思っていたんです。
でも、上記のインタビューを読んで、もはや誰に向けてなのかは、明らかですね。

ASKAさんに向けてでしょう。

それを念頭に置いて「憧れてきたんだ」を聴くと、聴くたびに熱いものが込み上げてきます。

あいみょんさんの願いが叶って、ASKAさんは、見事な復活を果たしました。あいみょんさんも、喜んでいることでしょう。

私としても、嬉しいですよ。CHAGE and ASKAがいたからこそ、私が大好きな「君はロックを聴かない」も生まれたってことですから。

あいみょん「君はロックを聴かない」

ロックが大好きだから、恋人にもロックに興味を持ってほしくて、ついつい熱く語ってしまう気持ち。共感します。
好きなものの魅力は、好きな人にも理解してもらいたいんですよね。
でも、ふと我に返ると結局、相手を置き去りにして、一方的に好きなものへの愛を語っているだけになって……。

あいみょんは、少し刺激的なフレーズとメロディーの語感を大切にするミュージシャン。彼女の感性は、もはや天才と言わざるを得ないでしょう。


そして、今週は、もう1つ嬉しいニュースが。
1989年と1990年のCHAGE and ASKA映像作品がデジタルリマスターされ、DVDでリリースとなります。

まずは1989年の『WALK』

「WALK」DVD / CHAGE and ASKA / 2020年5月27日発売

[CHAGE and ASKA Official Web Shop]『WALK』

shop.fannect.jp

 

貴重な「WALK」の制作過程やアルバム未収録曲「憧れ」が収録となると、ファン必見です。

さらには1990年の『SEE YA』

「SEE YA」DVD / CHAGE and ASKA / 2020年5月27日発売

[CHAGE and ASKA Official Web Shop]『SEE YA』

shop.fannect.jp

 

CHAGE and ASKAの大ブレイク前夜が収録された、これまた貴重映像。MULTI MAX結成当時やASKAさんのロンドン移住といった、チャゲアス史に燦然と輝く出来事が観られます。