ASKA「はじまりはいつも雨」30周年 今こそ語りたい編曲革命とピカルディ終止
1.発売30周年記念日に『「はじまりはいつも雨」を語ろう』企画
2021年3月6日は、ASKAさんの名曲「はじまりはいつも雨」発売30周年記念日。
Fellowsの間でASKA公認ライターと評されているs.e.i.k.oさんが2021年3月6日に『「はじまりはいつも雨」を語ろう』というお祭り企画を立ち上げた。
もちろん、私も、微力ながら参加させていただきたい。
1991年3月6日の発売から30年たっても、雨の名曲特集では必ず取り上げられるほど、現在も人気は圧倒的。
ロングセラー曲としても有名で、2010年には『FRIDAY SUPER COUNTDOWN 50』の20年間トータルランキングで1位に輝いた。まさに平成最大のヒット曲と言っても過言ではない名曲だ。
だから、この曲の魅力は、もはや語り尽された感はある。
至福感に包まれながらも、かすかな感傷を呼び起こすメロディー。
雨の暗いイメージを幸福の象徴へと大きく覆した、散文詩のような歌詞。
メロディーに愛の感情を的確に乗せる、甘く繊細な歌唱、などなど……。
まだあまり語り尽されてないことがあるとすれば、それは編曲の完成度だろうか。
2.「はじまりはいつも雨」は、J-POPの編曲革命だった
当時の様々な流行歌を今、聴いてみると、イントロ・間奏・アウトロに同じメロディーや歌メロディーを多用していることに気づく。
しかし、「はじまりはいつも雨」は、それがない。
イントロ、1番と2番の間奏、2番と大サビの間奏、アウトロとすべて異なるメロディーにして、歌のメロディーも一切使っていない。
何度聴いても飽きない趣向が凝らされているのだ。これは、CHAGE and ASKA最大のヒット曲「SAY YES」にも言える。
さらに、「はじまりはいつも雨」は、歌メロディーの裏でも、オリジナリティー溢れるメロディーを配している。特にサビで奏でるメロディーは、ASKAさんの歌唱と絶妙に融合する。
この曲の編曲者は、澤近泰輔さん。CHAGE and ASKAバンド、ASKAバンドのキーボーディスト、およびバンドマスターを務めてきた。
CHAGE and ASKA不動の人気ナンバー1曲「PRIDE」、ASKAの復活曲でYouTubeの急上昇1位を獲得した「FUKUOKA」の編曲者でもある。
CHAGE and ASKAは、1980年代終盤から1990年代前半にかけて、大きな飛躍を果たした。それは、澤近泰輔さんが加わってからの時期と重なる。もう1人「SAY YES」を編曲した十川知司さんと並んで、CHAGE and ASKAの躍進を裏方として支えた功労者なのだ。
澤近さんは、「はじまりはいつも雨」の編曲で、キーボード、ストリングス、ギターの音色を巧みに配置して、移り変わる情景を描写している。そのため、楽曲全体がまるで映画音楽のように仕上がっている。
あの時代、流行歌にこれほど芸術的で先進的な編曲を施す編曲家はいなかった。だから、私は、澤近さんの数々の名編曲に魅了された。
「はじまりはいつも雨」の編曲の中では、私は、1番と2番の間奏が好きだ。
恋人と会う前のシーンから、恋人と会った後のシーンへの移り変わる間の心のときめきを見事に表現している。
3.バロック音楽で有名な「ピカルディ終止」がJ-POPの1番で使われた驚き
そして、もう1つ、この曲で特筆すべき編曲は、演奏も歌声もすべて止まる空白の一瞬である。1番の前半で、恋人を雨の中連れ出す場面と、彼女の名前を呼ぶ場面を切り替える一瞬の間。
音楽用語ではブレイクと呼ぶらしい。
2人が雨の中を楽しくデートする情景が思い浮かぶ最も雄弁な空白は、文学の行間のような芸術だ。
私は、初めて「はじまりはいつも雨」を聴いたとき、この一瞬の空白に、あまりにも大きな衝撃を受けた。何なんだ、この鮮やかな切り替えは、と。
なぜこれほどまで、この場面に魅かれるのか。
これまで自分でも分からなかったのだが、最近同じような感覚の方から聞いた話によると、そこには「ピカルディ終止」という技法が使われているのだという。
マイナー調の最後の主和音をマイナーコードではなくメジャーコードに変化させ、少しどんよりした雰囲気の中に明るさを与えて終わらせる。バロック音楽でよく使用される技法である。
通常は、楽曲の最後に使用するのだが、「はじまりはいつも雨」では前半の場面切り替えで使用している。
この曲の1番は、Aメロ、Bメロ、Aメロ、Bメロ、サビの流れ。ピカルディ終止を使用しているのは、BメロからAメロに戻る箇所だ。
この使い方は、極めて珍しいそうで、それがこの楽曲の魅力を倍加させる。
ASKAさんと澤近さんのどちらが考案したのかは不明だが、発売30年後に注目するならここだろう。
この頃から彼らは、J-POPとクラシックの融合を試みていたのだ。
楽曲の前半で音を止めて場面を切り替えるブレイクの芸術は、最近の音楽にも生かされている。米津玄師さんの大ヒット曲「Lemon」には、Aメロの途中ですべての演奏と歌唱を一旦止める瞬間がある。思い出を呼び起こす場面と、思い出を語る画面との切り替えに使っている。
このブレイクから、私は、すぐ「はじまりはいつも雨」を思い起こした。
米津さんがASKAさんを意識しているかどうかは不明だが、当時の手法が若いアーティストにもしっかりと引き継がれている。
だからこそ、「はじまりはいつも雨」は、今、聴いても、古さを感じない。
1991年当時、「はじまりはいつも雨」は、3か月もCD欠品が続くロングセラーとなり、さらにはミリオンセラーを達成。J-POPが一気に革新した。
そんな普遍の名曲だからこそ、30年間にわたって多くの人々に愛されてきたのだろう。そして、これからもきっと様々な人々に幸福を運んでくれるにちがいない。
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来月はASKA「はじまりはいつも雨」発売30周年!
2021年3月6日は、「はじまりはいつも雨」発売30周年なんですね。
今年は、チャゲアス関連の名曲群が数多く30周年を迎えます。
ASKA - はじまりはいつも雨 (Official Music Video)
noteやTwitterでs.e.i.k.oさんが3月6日に『「はじまりはいつも雨」について、語りませんか?』という呼びかけ企画をされています。
ASKAファンの皆さんがどんな「はじまりはいつも雨」語りをされるのか、とても楽しみです。
私も、「はじまりはいつも雨」を今一度堪能してみようと、いろんな動画を視聴しています。
そこで見つけたのが岩崎宏美さんの「はじまりはいつも雨」。
岩崎宏美 はじまりはいつも雨
岩崎宏美さんの歌唱力は、歌の上手さはもちろん、その艶、ふくよかさ、色気が群を抜いていますね。
ASKAさんとのデュエット曲「Love is alive」もいまだに高い人気を誇っています。
もっとASKAさんのいろんな曲を歌ってほしいなと思います。
「はじまりはいつも雨」は、他にもいろんなアーティストがカバーしていますが、私の場合、やはりFellows作詞作曲企画で有名になった3人のカバーをよく視聴します。
ASKA はじまりはいつも雨【フル・歌詞付・歌ってみた】Cover by 小倉悠吾
小倉さんは、ASKAさんにもミスチル桜井さんにも声が似ているので、聴いているとASKAさんがBank Bandとライブでコラボしたバージョンを聴いた気分になります。
他にもASKAさんの様々な楽曲をカバーしていて、どれも1級品です。
ASKA "はじまりはいつも雨" (cover) / 畑中摩美
ギター弾き語りの名手と言えば、畑中摩美さんですね。
ギター1本でこの楽曲の魅力を最大限に引き出してくれています。
はじまりはいつも雨/ ASKA (Covered by 山下カツヒロ)
山下カツヒロさんのハスキーで優しい歌声もファンは多いですね。
ピアノとギターを前面に出した優しいアレンジも、聴き心地が最高です。
他にも魅力的な「はじまりはいつも雨」があります。
ASKA / はじまりはいつも雨 by とみさん
そして、ASKAカバーに欠かせないのは、とみさんですね。
ASKAさんに声がかなり似ているということで、ASKAファンの間でも有名な方です。
動画では歌い方や仕草まで似せているので、一般の方には本物と区別がつかない場合もあるようです。
「はじまりはいつも雨」ASKA カラオケ100点おじさん Unplugged cover
カラオケ100点おじさん、という名前でやっているだけあって、歌の上手さが素晴らしいですね。
こういう動画を視聴すると、歌の上手い人がうらやましくなります。
けいたんの歌うま増やします。 【歌い方】はじまりはいつも雨 / ASKA 歌詞付【カラオケ上達 歌ってみた カバー】
けいたんさんは、「はじまりはいつも雨」の歌唱が上達する歌い方講座の動画を制作されています。
分かりやすい、と定評がありますね。
また、「はじまりはいつも雨」のメロディーの良さは、歌がなくても堪能できます。
私は、ピアノソロでの「はじまりはいつも雨」を聴くのが好きで、下記の2動画はかなりのお気に入りです。
はじまりはいつも雨 TamaPianoPlaysASKA
スローバージョンで優しく柔らかなタッチで弾き上げています。
アレンジも、原曲に近いバージョンになっているので、違和感なく聴けますね。
そして、独自のアレンジを施しているのがこちら。
♪浜松駅ピアノ♪ はじまりはいつも雨を弾いてみた ぴあのまそ
浜松駅のピアノで即興演奏をされている動画ですが、アレンジにかなりのオリジナリティーを加えています。
このピアノソロも、優しく柔らかなタッチで弾いているので、癒し効果抜群です。
私は、どうやらこういうタッチのピアノソロが好きなようです。
「はじまりはいつも雨」発売30周年の3月6日まで、あと1か月足らず。
これから、どんな盛り上がりを見せるのか、楽しみですね。
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2020年チャゲアス10大ニュース!
今年も残りわずか。となると、恒例の『2020年チャゲアス10大ニュース』の発表です。
今年は、もうチャゲアスじゃなくて、Chageと「CHAGE and ...」とASKAじゃないか、というツッコミもあろうかと思いますが、当ブログではそれらをひっくるめてチャゲアスということで。
では、時系列順に振り返ってみましょう。
2020年3月6日、ASKAさんは、CD発売に先がけてニューアルバム『Breath of Bless』のハイレゾ&通常配信発売を開始しました。
CD発売前に全曲先行配信!これには驚きましたね。
時代を先取りしての新たな試みです。
今は、特殊感がありますが、10年後にはスタンダードになっているかもしれません。
コロナ禍でどんどんオンライン化は、進むでしょうし。
ASKA『Breath of Bless』ハイレゾ&通常音源配信開始
そして、デジタルブックレットも、配信発売となりました。
『Breath of Bless』デジタルブックレット
さらには、POP UP SHOP「Breath of Bless ASKA MUSEUM」も開催。
DADAレーベルの自由さを次々と思い知らされたプロモーションでした。
②ASKA、ニューアルバム『Breath of Bless』発売
ASKAさんは、新たなプロモーション群の後、満を持して2020年3月20日、ニューアルバム『Breath of Bless』のCDを発売します。
ニューアルバムを発売するたび、前作を上回り続けるASKAさん。
もちろん、今作も、最高傑作となりました。
全15曲という大容量が嬉しいですね。名曲揃いで、私は、今も車で毎日聴いていますが、全然飽きません。
ASKA New Album『Breath of Bless』(Audio Teaser)
私も、全曲レビューを書かせていただきました。
ASKAニューアルバム『Breath of Bless』レビュー
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私の中で、大きなニュースだったのが、ASKAさんのTwitter開始。
ASKAさんのOfficial Twitterは、既に存在していて、スタッフが管理しています。
なので、個人としては始めないだろう、と思っていたのですが、2020年4月から開始されました。
コロナ禍でライブが延期となり、次のライブツアーもできない中、ASKAさんは、発信ツールとして活用。
しかも、ASKAさんは、精力的にFellowsの方々をフォローし始めていて、あっという間にOfficial Twitter以上の人気となりました。
今、様々なSNSが存在していますが、最も拡散力が強いのはTwitterだと思います。
TwitterにはFellowsがたくさんいますから、リツイートの連鎖で、若い人々にもASKAさんの音楽が広まるきっかけになっていきそうです。
④コロナ禍でASKA、CHAGE and ASKAの貴重映像作品が続々無料公開!
2020年、世界最大のニュースと言えば新型コロナウイルス感染拡大でしょう。
日本でも、3月の緊急事態宣言以降、ライブは中止か延期、国民はステイホームを余儀なくされました。
そんな中、アーティストの方々は、国民にエンターテイメントとして、映像作品の無料公開に踏み切りました。
ASKAさんやCHAGE and ASKAのYouTube公式チャンネルでは、続々と過去の映像作品が公開。
限定公開の作品もありましたが、現在も公開されている作品も多数あります。
ASKAさんの復活コンサートの「YAH YAH YAH」は、何度視聴しても目頭が熱くなりますね。
「ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 THE PRIDE」
そして、CHAGE and ASKAの集大成とも言える『alive in live』の「RED HILL」の公開には、多くのファンが歓喜したことでしょう。
⑤ASKA、新曲を3週連続配信発売
ASKAさんは、新たな企画として何と新曲の3週連続配信発売をやってくれました。
9月11日(金)『幸せの黄色い風船』
9月18日(金)『自分じゃないか』
9月25日(金)『僕のwonderful world』
このときは、毎週、金曜日が来るのが待ち遠しかったですね。
事前に
#どポップ曲
#ライブでひとつになる曲
#ジャジーな曲
と明かしていたとおり、3曲それぞれが全く異なるタイプの名曲でした。
ASKA『幸せの黄色い風船』(Audio Teaser)
ASKA『自分じゃないか』(Audio Teaser)
ASKA『僕のwonderful world』(Audio Teaser)
⑥Chage、初のオンラインライブ開催
Chageさんも、2020年は、ファンミーティングが中止、ライブツアーもできず、何とかクリスマスパーティー公演は開催、という状況となりました。
そんな中、Chageさんは、新しい試みとして、2020年9月5日、初の単独オンラインライブ『Chage Online Live 2020 ~君に逢いたいだけ~』を開催しました。
愛弟子である川島ケイジさんのオンラインライブにゲスト出演したのがきっかけとなって、とんとん拍子で決まった印象です。
Chage初の単独オンラインライブ『君に逢いたいだけ』レポ
ChageさんのMCと歌声、そして、チャットでのやりとりは、聴衆との距離感をほとんど感じさせませんでした。
新たなライブ形式の可能性を幾度となく感じられた名ライブとなりました。
⑦Chage、配信ニューシングル「君に逢いたいだけ」発売
Chageさんも、コロナ禍の中、新曲をしっかり制作してくれました。
まずは、単独オンラインライブ『Chage Online Live 2020 ~君に逢いたいだけ~』で、その新曲「君に逢いたいだけ」を初披露。
ファンの間では、ライブチャットで、名曲との評価が高く、大いに盛り上がりました。
そして、久しぶりに瀬尾一三さんが編曲というサプライズも。
10月7日には配信シングルとして発売となりました。
⑧ASKA、地上波全国放送のテレビ番組復帰
2020年9月30日、ASKAさんがテレ東音楽祭に出演して、大きな話題となりました。
事件後、テレビは、ローカル番組やAbemaTVへの出演こそありましたが、地上波全国放送のテレビ番組復帰は初。
Twitterでは「ASKA」がトレンド入りしましたね。
しかも、「ASKAとマイクがソーシャルディスタンス」がネットで広がり、ASKAさんの名前が若い人々にも一気に有名になりました。
ASKAさんは、第1部のトリで「はじまりはいつも雨」、そして大トリで「歌になりたい」を披露。
そして、11月8日はテレビ東京で『ASKA75分スペシャル』という特別番組が放送となりました。
とても秀逸な構成で、現在のASKAさんの音楽活動とそこに至る過程までも分かる内容になっていて、まさにファンが望むものを見せてくれていました。
この番組のプロデューサーは、間違いなくFellowsですね。
ASKAさんは、2020年10月11日にVRを使用したMV撮影の有料生配信「ASKA VR 2020」を行いました。
MV撮影を有料で生配信する、というのは、これまた新しい試みです。
しかも、ASKAさんが中学1年から高校2年までを過ごした千歳を撮影地に選んだので、大きな話題を呼びました。
VR生配信の様子については、ASKA歌詞分析でお馴染み、s.e.i.k.oさんが「まさにこれ」という最高のレビューをしてくれてます。
s.e.i.k.oさんの文章は、無料で読めるのが不思議なくらいの作品ばかり。ASKAさんも、絶賛していて、Fellowsの間では「ASKA公認ライター」と呼ばれています。
このMV撮影は、大いに盛り上がり、またもTwitterのトレンド入りを果たしました
⑩Chage、ニューアルバム『Boot up!!』発売
Chageさんは、2020年12月9日、ニューアルバム『Boot up!!』を発売。
Chageさんのコロナ禍の中で、なかなかライブができない中、ファンに自らの想いを届けようという心意気が全編に感じられます。
何せ、全曲Chageさんの作曲で、しかも全て新曲。そして、全てがラブソング。
1曲目から5曲目まで、島田昌典さんが編曲を担当されており、島田さんは、ビートルズを音楽のルーツにしていますので、Chageさんと好相性です。
さらには、瀬尾一三さん、松井五郎さん、Amazons、澤地隆さん、十川ともじさん、とチャゲアス時代からChageさんの名曲を彩ってきた方々が参加されていて、懐かしさと新しさを兼ね備えた名盤となりました。
以上、2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大変な年になりましたが、それでもお2人は、精力的な活動を展開し、話題に事欠かない1年となりました。
2020年にYouTubeでよく聴いたオリジナル曲ベスト10
今週は、私が2020年にYouTubeでよく聴いたオリジナル曲ベスト10を発表させていただきます。
私が今年聴いた楽曲になりますので、発売は今年とは限りません。
そして、特定のアーティストに偏るのを防ぐため、1アーティスト1曲限定となっております。
①「自分じゃないか」ASKA
今年、ASKAさんが企画した3週連続新曲配信の2曲目ですね。インパクトが最も大きいこの楽曲をよく聴きました。
新型コロナウイルス感染拡大中の世相を反映したロックとなっています。歌いだしは、少しダークに始まり、サビで感情が爆発する対比が強く印象に残ります。
どんなに常識が覆ったとしても、すべては自分に行きつく。
そんな哲学的な響きさえ感じられます。
「いろんな人が歌ってきたように」からの流れを引き継ぐ名曲ではないでしょうか。
②「君に逢いたいだけ」Chage
チャゲアスの1980年代を支えた編曲家瀬尾一三さんが編曲を担当されて、大きな話題を呼びました。
Chageさんの年輪を感じさせる情緒豊かなメロディーとソロの名曲「アイシテル」のテーマを引き継いだ詞が沁みます。
そして、この楽曲も、新型コロナウイルスの影響を感じさせます。
主人公の逢いたい人を描きながらも、Chageさんがライブでファンに逢いたい、という気持ちが色濃く反映されているからでしょう。
③「憧れてきたんだ」あいみょん
今年のあいみょんと言えば、「裸の心」がUSEN年間1位の大ヒットを記録し、DISHに提供した「猫」も大きな話題となるなど、さらに躍進した印象があります。
しかし、私がはまったのは、2017年のメジャーレビューアルバム『青春のエキサイトメント』の1曲目に収録となった「憧れてきたんだ」。
その発端は、このインタビュー記事を見つけたからでした。
『あいみょん “青春の興奮から生まれた音楽”が濃縮されたアルバム。心に突き刺さる歌声、エッジの効いた詞が生まれる秘密を探る』
https://tokyo.whatsin.jp/119423
ASKAさんに向けて歌ってたんだ、ということを知り、目頭を熱くしながら繰り返し聴きました。
④「拝啓、少年よ」Hump Back
AbemaTVで格闘技の試合を見ていて、入場曲に使用されていた曲に、たった1回聴いただけで魅了されました。
友人への熱い想いがストレートに伝わってきます。リズムに乗った言霊は、強い響きを持ちますね。
Hump Backの2018年のデビュー曲で、スマッシュヒットを記録したようです。1200万回再生を超えてるので、若い人々にかなり人気があるんですね。
作詞作曲・ボーカルを務める林萌々子さんは、シンガーソングライターとして、素晴らしい才能の持ち主です。
⑤「信じる友へ」宇海
今年、ASKAさんが宇海さんの歌唱表現力を絶賛して大きな話題となりました。
「信じる友へ」は、宇海さんが所属するユニット「815-ハチイチゴ-」のオリジナル曲です。
2018年のアルバム『十色生』の収録曲なのですが、今年、YouTubeで聴いて、魅了されました。私は、沖縄を感じる音楽が好きで、この曲は、その中でもトップクラス。
そして、澤近泰輔さんのピアノ演奏をバックに情感豊かに歌い上げる宇海さん。
以前、ミュージカルで舞台に立っていたというだけあって、声量が豊かで、芯がしっかりしている上に艶やか。
サビのメッセージ性の強さがぐいぐい入ってきて、こみ上げるものがあります。
⑥「香水」瑛人
今年、最大の話題曲と言えば、「香水」でしょう。
無名だったインディーズアーティストの楽曲でありながら、SNSによる拡散で大ヒットした革命的名曲です。
音域が広くなくても歌いやすいメロディーとJ-POPの王道を行く構成。
アコースティックギターによるシンプルなアレンジ。
優しくも熱い、心地良い歌声。
LINEやインスタを意識させる今風の情景描写と、失恋や挫折を描いた共感性の高い詞。
普段着の自然体で撮影し、瑛人の素朴な人柄が垣間見えるMV。
それらが絶妙に融合し、大ヒットしました。
⑦「夜に駆ける」YOASOBI
星野舞夜さんの小説『タナトスの誘惑』を原作として、小説を音楽にするユニット「YOASOB」が制作した「夜に駆ける」。
物語性に富んだ詞と、リズミカルかつ心地良いメロディー、ikura(幾田りら)さんのボーカルが絶妙に融合して、ヒット曲の要素をすべて満たしているように感じます。
上記のYouTube動画は、これもまた今年話題になったチャンネル『THE FIRST TAKE』でikuraさんが歌うTHE HOME TAKEバージョン。
これからは、アーティストが自宅やプライベートスタジオから動画を発信する時代が訪れそうです。
⑧「シロヨヒラ」川島ケイジ
今年は、Chageさんとのオンラインライブ共演も話題になった川島ケイジさん。デビューのきっかけも、『Chage Fes 2015』でしたね。
今年発表したオリジナル曲の「シロヨヒラ」は、胸に沁みる名曲です。タイトルは、「白いアジサイ」を意味しています。
亡くなった人への残された人の想いを描いており、歌いだしのアカペラから一気に、温かい情感の世界に引き込まれていきます。
玉置浩二さんの歌声を彷彿させる、とよく評される川島ケイジさん。どんどん玉置さんの域に近づいているように感じます。
⑨「あなたがいることで」Uru
「プロローグ」に魅かれて以来、注目してきたUruさん。
かつては、YouTubeでカバー動画をアップして人気が出てきたのですが、当時は謎だらけの歌手でした。
最近は、どんどん有名になってきたおかげで、メディアへの露出も増えてきましたね。
今年も、オリジナル曲「あなたがいることで」が大ヒットし、さらなる躍進を遂げました。
Uruさんは、歌声や詞、メロディーから推察できるように、極めて繊細な方ですね。それをしっかり楽曲に落とし込んでくれるから、多くの人々の琴線に触れるのでしょう。
この楽曲は、男性目線で少し距離ができてしまった女性への想いを歌っています。
⑩「雨あがり」宮迫博之
今年、YouTube最大の話題と言えば、雨上がり決死隊宮迫博之さんのYouTuberとしての復帰ですね。
しかも、コロナ禍で落ち込むテレビ業界とは裏腹に、YouTubeで見事に成功を収めて、芸能人が一気にYouTubeに流れ込むきっかけを作りました。
私は、「FUKUOKA」で復活したASKAさんの姿と重なりました。
でも、最初は、闇営業の印象が強く、1本目の動画は、goodマークが12万、badマークが20万と世間の反感を買いました。
しかし、2本目で天才カリスマYouTuberヒカルさんが支援して宮迫さんの魅力を引き出し、goodマーク10万、badマーク5万と好印象に大逆転。
4本目でレペゼン地球DJ社長とコラボしてgoodマーク10万、badマーク1.9万とどんどん勢いに乗って行きました。
やはり才能あるタレントは、1つのきっかけでまた多くの人々の心をつかめるんですね。
そのDJ社長が作詞作曲して、宮迫さんが歌った「雨あがり」は、まさに宮迫さんの栄光からの転落、そしてそこからの復活を鮮やかに歌い上げる名曲となり、現在、150万回を超える再生数を記録しています。
以上、私が2020年にYouTubeでよく聴いたオリジナル曲ベスト10でした。
今年は、聴いた名曲が多かったので、10曲では全然足りないような印象が残りました。
2020年にYouTubeでよく聴いたカバー曲ベスト10
例年であれば、その年にYouTubeでよく聴いたオリジナル曲ベスト10をやる時期ですが、今年は、その前にYouTubeでよく聴いたカバー曲ベスト10を発表したいと思います。
YouTubeの広告費がテレビの広告費を逆転し、YouTubeでテレビの音楽番組級の動画が上がるようになってきました。
そして、メジャーレーベルもインディーズレーベルも関係なく、いい音楽がSNSを通じて広がり、人気が集まる傾向にありますね。
YouTubeでは自前の演奏ならカバー曲をアップOKですから、いろんなタイプのカバー曲を視聴できるようになりました。
2020年に私が視聴したカバー曲ベスト10。楽曲単位で紹介しようとすると、特定のアーティストに偏るので、1アーティスト1曲に絞ってのご紹介とさせていただきます。
ASKAさんのセルフカバー曲の中でも、絶大な人気を誇っています。
今年、YouTubeにアップされた『Made in ASKA』バージョンは、ASKAさんが風邪をひかれていたので、今回は昨年アップされた『My Game is ASKA』バージョンでご紹介です。
かつて、私は、カバー曲なんてカラオケでしょ、という思い込みがあったのですが、2005年の『My Game is ASKA』ツアーでASKAさんの「cry」を聴いて、認識が大きく変わりました。
アレンジや歌唱表現によって、楽曲に新たな命を吹き込むことができる、と。
若い女性の失恋を描いた歌なのですが、ASKAさんの歌唱とASKAバンドの演奏によって、原曲よりも遙かに、女性の気持ちが伝わってくるようになっていますね。
②「パプリカ」畑中摩美(米津玄師・Foorinのカバー)
今年、YouTubeでのカバー曲視聴にはまった最大の原因は、畑中摩美さんの「パプリカ」を聴いてから。
これを視聴するまでは、Foorinバージョンの「子供が自然の中で遊び回り、夢を抱く姿を応援する曲」というイメージ。
しかし、大人の畑中摩美さんが抜群の表現力で歌うと、懐旧の旅へ連れていってくれます。
2度と戻れない幼少時代の仲間や一緒に過ごした人々との日々への憧憬が呼び起こされます。
まさに、新たな命を吹き込むカバー曲の神髄。
この曲は、幼少時代に原爆で亡くなった友達を歌っている、という説もあり、聴く人が歌唱者の表現によって、どこまでもイメージを膨らませられる名曲ですね。
③「このまま君だけを奪い去りたい」織田哲郎(DEENへの提供曲セルフカバー)
1993年、突如現れて一気にトップアーティストになったDEENのデビュー曲です。織田哲郎さんが楽曲提供していると知って、そりゃ売れるでしょ、と思ったものです。日本一ヒット曲率が高い作曲家ですから。
今年、織田哲郎さんは、YouTubeでストリングスアレンジ&自らのピアノ弾き語りというスタイルでこの曲をカバーしました。
「YouTubeでやるレベルじゃないですよ」というコメントのとおり、もはやテレビ番組の企画として成立するレベルの動画となってます。
④「奏」JUJU(スキマスイッチのカバー)
スキマスイッチの代表曲をJUJUさんがカバーして、YouTubeの急上昇ランキング入りしました。
このカバー曲の圧巻は、大サビで、それまでの演奏が一切止まって静寂に。そして、打ち寄せる波の音のみをバックに、JUJUさんがアカペラで絶唱。
海辺の映像、波の音、歌声。これらが三位一体となって、至高の音楽を響かせています。
鳥肌が立つほどの表現力です。
このカバーには、JUJUさんがテレビで共演していた三浦春馬さんへの想いが詰まっているとも言われていて、その想いを想像すると、さらにこの楽曲の情感が伝わってきます。
⑤「心の友」蒼莉奈(五輪真弓のカバー)
現在、20歳のシンガーソングライター蒼莉奈さん。
オリジナルソングにも才能を感じますが、カバー曲でもシンガー・ギターリストとしての才能を存分に発揮しています。包容力ある女性の純真な心を透き通った歌声の弾き語りで表現しています。
選曲も秀逸。この曲は、1982年の五輪真弓さんのアルバム収録曲で、日本では有名ではありませんが、インドネシアで第2の国歌と言われるほど人気の楽曲。
蒼莉奈さんのカバーは、インドネシア国民の間で大人気となり、既に560万回再生を突破しています。
澤近泰輔さんとのコラボでお馴染みの宇海さんは、ミュージカルの舞台出身で、磨き上げたボーカル力が光ります。
この「罪と罰」は、椎名林檎さんご本人よりも毒気が強くないか、とさえ感じるほどの迫力で歌いあげています。
いつかASKAバンドのコーラス隊に加入してライブツアーに回ってくれたら、と思うほど魅力的なボーカルです。
カバーと言っても、いろんなタイプがあって、今年、一番笑ったのが会社員YouTuber永田さんの「えんとつ町のプペル」。
ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード、コーラス3人がすべて永田さんです。
しかも、それを動画として、本当に8人でやっているように見せています。
歌唱、アレンジ、映像編集のすべてが高いクオリティーであるとともに、コミカルな要素もふんだんに取り込んで、最高のエンターテイメントに昇華しています。
このカバーが生まれたきっかけは、キングコング西野さん作詞作曲の楽曲「えんとつ町のプペル」をカバーしてYouTubeにアップすれば、西野さんがネットで拡散してくれる、という企画。
「こういう才能を広めたいなぁ」という想いと「その才能を応援すればするほど、西野が得をする」というビジネスを融合させたのがこの企画だそうです。西野さんの企画力も、天才的ですね。
⑧「香水」瑛肩[チョコレートプラネット](瑛人のカバー)
今年最大の話題曲と言えば、瑛人さんの「香水」。
TikTokから火がつき、YouTubeで膨大な再生数を稼ぎ、有名無名問わず、多数のカバーが生まれて、社会現象になりました。
中でも、お笑い芸人チョコレートプラネットがカバーしたバージョンは、音楽としては精巧さを追求しながら、映像は、本家のパロディーという、音楽性+エンターテイメント性を兼ね備えています。
しかも、既に3200万回再生を超える大ヒットカバーとなっています。カバーでここまで再生されるというのは、異例中の異例です。
ZARD坂井泉水さんの歌声にそっくり、と話題になっていた柴山サリーさん。
ちょっと似てるだけでしょ、と思っていましたが、聴いてみてびっくり。
本人かどうかを聴き分けるクイズがあったとしたら、絶対にどちらか分からないでしょう。
コメントに「99.9%ZARD」とありましたが、私の中ではもう100%ZARDにしか聴こえません。
今年、新生WANDSが話題になりましたが、私としては、柴山サリーさんで新生ZARDを復活させてほしい、と期待しています。
⑩「Breath of Bless」Breath of Bless Special Orchestra・藤原いくろう (ASKAのカバー)」
衝撃の大きさという意味では、このカバーが最大でしょう。
何せ30名を超える演奏家の方々とリモート演奏で「Breath of Bless~すべてのアスリートたちへ」をレコーディングしているのですから。
コロナ禍だからこそ生まれたカバー動画と言えるのではないでしょうか。
これは、もうそのまま東京オリンピックの開会式で使えるんじゃないかというくらいの作品ですね。
ASKAさんも「牧歌的」と絶賛されています。
以上、「2020年にYouTubeでよく聴いたカバー曲ベスト10」でした。来週は、「2020年にYouTubeでよく聴いたオリジナル曲ベスト10」を特集する予定です。
名曲は、とりついて離れない ~Hump Back「拝啓、少年よ」レビュー~
飲食店や小売店舗にいるとき、BGMで流れてくる曲につい魅かれてしまうことがある。
気にせず通り過ぎようとしても、頭の中からそのメロディーと歌声が離れない。
そんな曲は、大抵、これから長年聴き続けるであろう名曲だ。
ときに、全く想定もしない場面で、そんな名曲に出くわす場合もある。
私は、先日、AbemaTVで格闘技の試合を観ていた。
当然、格闘技の試合だから、普通は格闘技以外に興味が移るはずがない。
しかし、この日は、違っていた。
ある試合で流れた曲に、私は、とりつかれてしまったのだ。
それは、田舎町の小さなジムから現れた小柄な有望キックボクサーAyaka選手の入場曲だった。
心地良いメロディーとリズム。パンチの効いた安定感ある歌声。
格闘技の試合自体も、キレのある動きと高い技術が交錯する名試合であったが、私の興味は、それ以上にAyaka選手の入場曲に移っていた。
私は、自らの持てる情報収集力を駆使して、その試合後、気になっていたその曲を調べた。
たどり着いたのがHump Backのシングル「拝啓、少年よ」。
どうやら2018年に発売となった曲で、オリコン最高13位のスマッシュヒットを記録していたらしい。
作詞作曲は、ボーカルを務める林萌々子。彼女は、シンガーソングライターとしての才能に満ち溢れている。
連絡がつかなくなった友人を思い出して作った楽曲だそうだ。
描くのは、大きな夢を描いていた青春時代の追憶。
少年が青春時代に描いた夢は、現実に跳ね返されてしまう。そして、少年は、挫折を繰り返し、怖さを覚える。
いつのまにか、大人になってしまった少年。でも、本当はまだ夢を追いかけたい。
そんな少年にこの歌は、問いかける。
少年よ。下を向いてばかりじゃなく、上を向いて行こう。空はあんなに綺麗だよ。
夢は、なかなかつかめなくても、生きる希望として、追い続けるプロセスにきっと幸せがある。自らが終わらせない限り・・・。
「拝啓、少年よ」は、そう、力強く背中を押してくれる名曲である。
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JUJU 『奏(かなで)』レビュー ~波の音だけが伴奏の絶唱が圧巻~
YouTubeの急上昇ランキングに上がっていたので、何気なく再生したJUJU『奏』MV。
スキマスイッチの名曲として、誰もが知っているだけに、どんなカバーになっているのか、少し興味があった。
夕暮れの海辺を背景にJUJUが砂浜で裸足で歌い上げる。
ピアノとギター、ストリングスが切ない雰囲気を作り上げ、JUJUがソウルフルな歌唱で引き込んでいく。
ここまでは、私の想像どおり。
でも、急上昇に乗ってくるには、想像を超える何かがあるはず。
それが明らかになったのが大サビだ。
それまでの演奏が一切止まり、静寂の中に、打ち寄せる波の音だけが聴こえてくる。
その波音だけをバックに、JUJUが大サビを絶唱する。
おそらく、そこに描かれている詞の内容こそ、JUJUが今、最も伝えたい想いなのだろう。
愛しい人に出会えた感謝の想い。生きる世界さえ変えてくれるほど影響を与えてくれた人への愛情。
そこには、JUJUの三浦春馬への想いが詰まっていると言われている。
演奏なしで、ここまで歌声だけで、感情を多くの人々にストレートに伝えられる歌声。
あまりの素晴らしさに鳥肌が立った。
静かに打ち寄せる波の音がさらなる情感を呼び起こす。
海辺の映像、波の音、歌声。これらが三位一体となって、至高の音楽を響かせる。
今年観た中でも、トップクラスの映像作品であった。
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